業務用ロボット(セキュリティロボット・配膳ロボット・お掃除ロボット・AMR/AGV)では、タワー上のセンサー旋回、LIDARの連続回転、マストやアームのケーブル巻取りなど、回転しながら電力と信号を伝送する場面が必ずあります。そこで用いられるのがスリップリングです。
よくあるお悩み事項は以下の通りです。
本記事は、こうした課題の背景と解決アプローチ例をご紹介します。
スリップリングは回転側リングと固定側ブラシの接触で導通します。接触点数(マルチポイント)やブラシ材料(貴金属/銀合金/カーボン)、接触圧、回転速度が摩耗と接触抵抗に影響します。摩耗が進むと微小な断続導通が増え、回転中のノイズ・チャタリングが発生、信号品質(イーサネット、エンコーダ、同軸ビデオ)が悪化します。
工場や商業施設の清掃・配膳では、細かい粉塵や油ミスト、水滴の付着が避けられません。防塵防水(IP等級)の不足、あるいはシールの劣化があると、接触面に異物が侵入して接触抵抗が増加、長時間稼働での発熱・ノイズの誘因になります。
高速通信やモータ駆動の同居により、EMI(電磁妨害)やグラウンドの取り回しが不適切だと、回転部で拾ったノイズがセンサー出力に重畳し、自走ロボットの自己位置推定や安全制御を不安定にします。ツイストペアの保持、シールドの360°接続、ケーブルストレインリリーフが重要です。
IP65は「粉塵が内部に侵入せず、あらゆる方向からの噴流水に対して保護」を意味します。IP54は粉塵の侵入に制限があり、飛沫に耐性、IP66は強い噴流水、IP67は一時的な水没まで耐える指標です。床洗浄機や屋外巡回など水しぶきが多い用途では、IP65以上が検討対象になりますが、シール強化は回転トルク上昇や寸法増にもつながるため、環境・洗浄方法・保守インターバルを含めた全体設計で決めます。
カプセル型はコンパクトで小電流・信号向け、スルーボア型は中央貫通でシャフトや配管を活かせます。パンケーキ型は高さ制約に有利ですが、接触径が大きく摩耗傾向に注意。ハイブリッドは電力と信号、同軸、イーサネット/エンコーダ/電源を一体化でき、ロボットの省スペース化に寄与します。
清掃ロボットのモータ周辺や屋外巡回での直射日光下では温度上昇が避けられません。材料・潤滑・シールは温度で特性が変わります。「高温環境 対策 方法」の観点では、許容温度範囲、熱抵抗、通電損、放熱経路を確認します。必要に応じて電力リングを増やし、発熱を分散するのが定石です。
床洗浄機・屋外警備・食品売場の夜間清掃など水しぶきが常態ならIP65以上を検討。一方で、屋内配膳ロボットの穏やかな環境では、IP54でも十分な場合があり、回転トルク・コスト・寿命のトレードオフ評価が重要です。
100BASE-TX/1000BASE-T対応では、特性インピーダンスの連続性、接触点の均質性、ケーブルツイストの保持が鍵。「イーサネット スリップリング ノイズ 対策」の視点で、シールド360°接続とグランド計画を明確化します。
商業施設向け警備ロボットでは、3D LiDARによる高精度な監視・検知が求められます。特に、LiDARの仕様上「長時間の高速回転」が必要となるため、スリップリングの選定が重要なポイントとなります。
今回の事例では、ブラシタイプの「AC6438」を採用。Ether-net通信など多様な信号伝送にも対応できることに加え、「ファイバーブラシによる長寿命」「高い耐久性」「メンテナンスフリー」といったMOOG製品ならではの特長が評価されました。
警備ロボットは、商業施設内で長時間・連続稼働するため、部品の耐久性やメンテナンス性が運用コストや安全性に直結します。AC6438は、こうした厳しい要求に応える製品として、警備ロボットの安定稼働と高性能な監視システムの実現に貢献しています。
今後も、商業施設向けロボット分野において、MOOG社スリップリングの高い信頼性と技術力が注目されることでしょう。
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