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建設機械の電動化はなぜ難しいのか?構造課題・制度・設計視点から読み解く技術的本質

Written by n_hiramatsu

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建設機械の電動化はなぜ難しいのか?構造課題・制度・設計視点から読み解く技術的本質
1. 建機電動化の全体像と背景
2. 現場で顕在化する電動化の壁
3. 建設機械電動化が難しい構造的理由
4. 持続可能な電動化を進めるための設計視点
5. 世界と日本における建機電動化の進め方の構造的な違い
6. 回転構造と電力伝送という技術アプローチ
7. お問い合わせ

1. 建機電動化の全体像と背景

世界的な脱炭素政策や環境規制の強化を背景に、建設機械分野でも電動化の流れが加速しています。欧州を中心に電動ショベル、電動ホイールローダ、電動クレーンなどが実用化され、日本国内でも電動ミニショベルや電動搬送設備の導入が進んできており、各種建機電動化への関心は高まっています。

一方で、電動化が単なる動力源の置き換えでは成り立たないことが、現場レベルで広く認識され始めています。建機の電動化は、動力構造・電源構成・制御構造・保守運用のすべてに影響を及ぼす大きな構造転換であり、従来設計の延長線上の発想だけでは対応が難しい領域に入りつつあります。


2. 現場で顕在化する電動化の壁

設計・開発現場では、次のような課題が共通して語られています。

  • 「建設機械の電動化は理論上可能だが、実装が難しい」
  • 「電動建機はなぜ普及しにくいのか?」
  • 「電動化すると故障リスクが増える理由は?」
  • 「電動建機 電源設計 方法が分からない」

実際の現場では、電源系トラブル、電装系信頼性低下、保守性の悪化、コスト構造の変化といった複合的な問題が重なり、電動化推進の障壁となっています。


3. 建設機械電動化が難しい構造的理由


電源設計が複雑化する理由

エンジン駆動中心の建機では、油圧系が主系統であり、電気系統は補助的な役割でした。しかし電動化により、電力が主動力源となることで、電源設計の難しさや電源構成の違いといった課題が発生します。

高電圧・大電流系統の管理、電力分配設計、冗長構成、安全回路設計などが必要となり、建設機械における電源の選定方法や高電圧機器設計時の注意点といった領域が、設計上の重要テーマとして大きく広がっていきます。


回転構造と電動化の相性問題が起きる理由

ショベルの旋回部、クレーンの旋回体、搬送設備の回転テーブルなど、建設機械には多くの回転構造が存在します。電動化によって大電力を回転部へ安定して供給する必要が生じることで、回転構造における電源伝送の信頼性確保や、電動建機特有の電力供給構造設計といった課題が構造的に顕在化していきます。

機械設計と電気設計が分離された設計思想のまま電動化を進めると、構造的ミスマッチが発生し、信頼性低下や保守負担増大につながります。


過酷環境が電動化リスクを増幅させる構造的要因

建設機械は、粉塵・水・振動・高温・低温といった過酷な環境条件下で稼働します。こうした環境要因は、電装部品の劣化や故障に直結しやすく、結果として装置全体の信頼性に大きな影響を与えます。

電動化によって電気系統の比重が高まることで、これまで部分的な影響にとどまっていた環境リスクが、装置停止や稼働率低下といった重大な運用リスクへと直接転換される構造になります。


エネルギーマネジメント設計が複雑化する構造的背景

電動建機では、バッテリー容量の設計、充電インフラとの連携、ピーク電力の制御、回生エネルギーの活用など、複数の要素が同時に関係してきます。これらの要素が相互に影響し合うことで、エネルギー全体の設計は極めて複雑なシステム構成となります。


4. 持続可能な電動化を進めるための設計視点


電動建機設計におけるチェックポイント

  • 電源構成の冗長性と安全設計
  • 高電圧・大電流対応部品の信頼性評価
  • 回転構造部の電力伝送方式検討
  • 環境耐性(粉塵・水・振動・温度)設計
  • 長期運用を前提とした保守性・交換性設計

電動化設計に求められる統合的な設計思想

建設機械における電源の選定・電源設計を考える際には、電気・機械・制御を個別に分けて検討するのではなく、装置全体を一つのシステムとして捉えた統合設計が重要になります。部分ごとの最適化ではなく、システム全体としての最適化を前提に設計することで、結果として高い信頼性と安定稼働の確保につながっていきます。


5. 世界と日本における建機電動化の進め方の構造的な違い

世界と日本では、建設機械の電動化に対する進め方そのものが、技術導入の問題にとどまらず、制度設計・インフラ整備・政策構造の段階から大きく異なっています。

欧州や北米では、脱炭素政策や環境規制を背景に、電動化を前提とした法制度・規制体系・政府助成制度が体系的に整備されており、建機電動化は個別技術導入ではなく、社会インフラの一部として設計されています。排出ガス規制や騒音規制の強化に加え、ゼロエミッション建機導入支援、公共工事における環境基準導入などが制度側から市場形成を後押しする構造が確立されており、充電インフラ・電力供給網・運用モデルを含めたインフラ主導型の電動化が成立しやすい環境が形成されています。

一方、日本では、脱炭素・GX政策は進められているものの、建機分野における制度設計・インフラ整備・補助政策は過渡期にあり、電動化は現場主導での導入検討が中心となっています。地域ごとの電力インフラ格差、現場条件の多様性、工期・コスト制約といった現実的な制約が大きく影響し、インフラ前提ではなく、既存現場環境の中で成立させる現場適応型電動化が主流となりやすい構造にあります。

また、日本では高電圧機器・電動機械に対する法令・安全基準・認証制度への適合が重要な設計要件となり、単純な技術導入ではなく、制度対応・規制適合・運用設計を含めた総合的な設計調整が求められます。電動化は技術課題であると同時に、制度・運用・構造設計を含む複合的なシステム課題となっているのが実情です。

このように、海外では制度設計とインフラ整備を前提とした制度主導・インフラ主導型電動化が進む一方、日本では現場制約・運用条件・制度対応を前提とした現場適応・段階導入型電動化が進められています。地域特性・制度環境・インフラ条件・運用実態に適合した設計思想を採用することが、現実的かつ持続可能な建機電動化の推進につながっていきます。


6. 回転構造と電力伝送という技術アプローチ

建設機械の電動化において本質的な技術課題の一つとなるのが、回転構造を持つ装置に対して、安定した電力を継続的に供給する仕組みの構築です。旋回・回転・連続動作を伴う構造においては、固定部から回転部へ確実に電力と信号を伝送する技術が不可欠となります。

この領域で活用される技術カテゴリの一つがスリップリングです。スリップリングは、回転体と固定体の間に電気的な接続を形成し、電源および信号を連続的に伝送する回転電気接続部品として、電動建機、クレーン、旋回装置、搬送設備などの多様な産業機械で使用されています。

高電圧対応設計、高耐環境性能、長寿命構造といった技術要素が統合されたスリップリングは、電動化によって高出力化・高負荷化する回転部への電力供給構造に対し、安定性と信頼性を両立させるための有効な技術的アプローチとなります。回転構造を前提とした電源伝送設計において、機械構造・電気設計・運用条件を横断的に統合できる点が、電動化時代における重要な設計要素となっていきます。


7. お問い合わせ

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